過去の応募作品一覧
ショートストーリーコンテストの本棚を作りました。ぜひお手にとってお読みください。コメント欄に感想をいただけたら嬉しいです。
応募要項
応募要項(共通)に準ずる。
創作のヒント
物語(ナラティヴ)の視点:人生と「物語」
私たちが本で読んだり、テレビドラマや映画を見たりするとき、そこにある「物語」に心動かされます。障害があろうとなかろうと、一生懸命生きている姿が感動を呼ぶのです。
人間は、困難な出来事に遭遇したとき、しばしば自分の物語をイメージすることで何らかの対応をとります。
例えば、どん底からの生還という物語の筋に沿ってみたり、今までの自分らしさ(キャラクター)を思い出してみたり…
物語は、語られることによって、他者に影響を与え、また自分自身にとっても刺激となるでしょう。どんな風に他の皆が頑張って「大丈夫」になってきたか、物語を追体験することで、自分も同じように励まされるのです。
しかし、場合によっては、特定の物語が「思い込み」や「囚われ」につながることもあります。
アーサー・フランク「回復の物語」
「昨日、私は健康であった。今日私は病気である。しかし明日には再び健康になるであろう」という基本的な筋をもつ物語/アーサー・フランク『傷ついた物語の語り手』(ゆみる出版)より
「回復の物語」の特徴
- 結末=元の状態に戻ること
- 「病気」はあくまでも一時的な中断
- 主人公は受動的(医療技術によって治される)
- 誰の耳にも心地良く響くので、社会において偏重される
ここでいう「回復(restitution)」には少し強い意味があって、元の健康な状態にすっかり戻る、というニュアンスです。つまり私たちは、病いに遭遇したとき、そのような期待を抱き、また病いを語るときもそのように語れたら安心する、ということです。
https://www.manekineko-network.org/sociology-peer-support/2019/01/05/病いの「物語」とピア・サポート/
「鬼滅の刃」然り、「鋼の錬金術師」然り…主人公に、ある日突然病が降りかかり、艱難辛苦を乗り越えて「回復する」、という展開は、起承転結として完成しているので、万人に受け入れやすいフィクションの王道です。
しかし、現実は非常です。基本的に、過眠症は薬では治りません。不自由な病態を受け入れ、なんとか折り合いをつけて生きていくしかありません。
その葛藤をうまくストーリーとして昇華させるのが、難しいところだと思います。
「回復の物語」が頼りにならないときに、どのような生き方を用意できるでしょうか?それは、私たちの社会が、あまり考えてこなかったポイントではないでしょうか?
身体的(または精神的)には根治しないまま、心の部分で自分の人生を受け止められるように模索し、自分なりの物語を作っていく、そのためには、聞き手が必要です。この患者会での出会いも、皆さんの物語に組み込まれていくことでしょう。
「物語」からみたピア・サポート
根治しない病を抱えて生きることは、「回復の物語」に依らない、自分自身の物語を模索する過程として捉えられます。その過程においては、物語の聞き手として伴走する他者の存在が重要です。あなたの人生には、どんな魅力的なキャラクターが登場しますか?
皆さんの物語、待ってます!