国際疾病分類(ICD)とは?

「疾病及び関連保健問題の国際統計分類:International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems(ICD)」とは、世界保健機関(WHO)が作成した医学的分類です。現在、日本では「疾病、傷害及び死因の統計分類」を告示しており、ICD-10(2013年版)に準拠しています。

ICDはアルファベットと数字を用いたコードで表されます。各国語で呼び名が異なっている場合でも、同じコードで表されるので、外国語がわからなくても、世界各国の統計について国際比較が可能となります。

  • 異なる国や地域から
  • 異なる時点で集計された疾病のデータを
  • 体系的な記録、分析、解釈及び比較

ICDと医学用語の違い

ICDは、統計分類であり、医学用語集ではありません。
分類とは、「ある基準に従ってカテゴリーやグループ別に分けて整理すること」をいいます。ICDは医学的に類似している疾患、傷害、状態などを区別して整理するための分類です。ICDでは全ての病気やけがは必ずどこかのグループに振り分けられるように設計されています。
これに対して、医学用語は、診断名や手技を一つ一つ学術的に命名したもので、それを集めたものを「医学用語集」といいます。
同じ性質をもつ病気を同じグループにいれるICDと医学用語集には大きな違いがあります。

例:ある患者さんが、医療機関を受診。症状、検査の結果から、「特発性過眠症」と診断された。その後、詳しい病歴の聴取や、その他の検査の結果から、月経周期に起因する「月経関連過眠症」と診断され、「月経関連過眠症」と診断名が変更された。

上の例において、最初の診断名は「特発性過眠症」ですが、さらなる検査の結果、診断名は「月経関連過眠症」と変更されています。異なる医学用語で表されるこの2つの診断名に対して、ICDでは、統計的にこれら2つの病態は同じグループに入れることとされており、特発性過眠症であれ、月経関連過眠症であれ、同じG47.1としてコードされます。(薬物誘発性で薬物の分類が必要な場合は、追加外因コードを使用します。)

これを理解していないと、「分類が間違っている」と思い込むことにつながりますので、注意してください。

ICDの基本原則

  1. 網羅性 …全ての疾患を網羅していること
  2. 排他性 …分類同士の重複がないこと

※分類であり、病名リストではない

ICD-10(2013年版)

過眠症は、ICD-10 では、「第5章 精神及び行動の障害(F00-F99)」→「F51 非器質性睡眠障害」→「F51.1 非器質性過眠症」および「第6章 神経系の疾患(G00-G99)」→「挿間性及び発作性障害(G40-G47)」→「G47 睡眠障害」に分類されています。
ほぼ同じ内容の過眠症状について、精神疾患か身体(神経)疾患か、という原因別に、分離しているのが特徴です。

第5章 精神及び行動の障害(F00-F99)

生理的障害及び身体的要因に関連した行動症候群(F50-F59)
コード コード名
F51
非器質性睡眠障害
多くの場合,睡眠障害は他の精神的又は身体的障害の症状の一つをなしている。ある患者に見られた睡眠障害が独立した状態なのか,それとも本章又は本章以外の章に分類されている別な障害における一特徴をなすものにすぎないのかは,診察時の治療的な考察や治療の優先度にもとづくと同様に,その臨床的なあらわれかたや経過にもとづいて決めなければならない。一般的に,もし睡眠障害が主訴の一つであり,しかもそれがそれ自体における一病態をなすものと認められれば,その症例にかかわる精神病理や精神生理を記述している他の関連診断名に併記して本コードを用いるべきである。本項目は,情緒的な成因が一次性の要因をなすものとみなされ,しかも他に分類される明白な身体的障害によらない睡眠障害のみを包含する。
除外:
・睡眠障害(器質性)(G47.-)
F51.0
非器質性不眠症
不眠症は,睡眠が量的質的に不十分な状態で,それがかなりの期間にわたり持続するものをいい,入眠困難,睡眠維持の困難,早期の終末覚醒が含まれる。不眠症は,多くの精神的身体的障害に見られる普通の症状の一つであり,それが臨床的像を支配している場合に限り,基礎障害に追加してここに分類すべきである。
除外:
・不眠症(器質性)(G47.0)
F51.1
非器質性過眠症
過眠症は昼間の過度の眠気及び睡眠発作(睡眠量の不足にもとづくものではない)として,又は,覚醒の際には完全に目覚めるまでの移行が長引いている状態として定義される。器質的要因が見られない場合,過眠症は通常は精神障害に関連して生じてくる。
除外:
・過眠症(器質性)(G47.1)
・ナルコレプシー(G47.4)
F51.2
非器質性睡眠・覚醒スケジュール障害
個人の睡眠・覚醒スケジュールと,その個人にとっての環境からみて望ましい睡眠・覚醒スケジュールとが同期しなくなり,不眠症又は過眠症の訴えがある場合である。
下記の心因性反転:
・概日・夜間相}リズム
・睡眠相
除外:
・睡眠・覚醒スケジュール障害(器質性)(G47.2)
F51.3
睡眠時遊行症[夢遊病]
睡眠現象と覚醒現象とが結合してあらわれている変容した意識状態である。睡眠時遊行症のエピソードの間は,患者は寝床から起き上がっている。通常は夜間睡眠時の最初の3分の1の間に生じ,患者は歩き回り,注意力,反応性及び運動能力は低い水準を示す。目覚めた後,そのできごとは憶えていないことが多い。
F51.4
睡眠時驚愕症[夜驚症]
大きな叫び声,体動,激しい自律神経症状表出に関連した著しい驚愕及び恐慌<パニック>の夜間エピソードである。通常は恐怖の叫びとともに夜間睡眠時の最初の3分の1の間に生じ,患者は起き上がるか立ち上がる。逃げようとするかのようにドアに突進することがしばしばあるが,部屋から出て行くことはあまりない。このできごとは回想されることがあってもそのうちのごく限られたものにすぎない(通常は心的イメージの一,二の断片のみ)。
F51.5
悪夢
悪夢は不安又は恐怖を伴う夢体験であり,夢内容のきわめて詳細な点まで回想されうる。この夢体験はきわめてなまなましいもので,通常は生存や安全や自尊心が脅威にさらされるという主題を持つ。全く同一か又はよく似た恐ろしい悪夢の主題が,繰り返し生ずることがしばしばある。典型的なエピソードの間には,かなり強い自律神経症状表出があるが,しかし叫び声や体動は認められない。目覚めると,患者は急速に注意力と見当(識)を取り戻す。
・夢不安障害
F51.8 その他の非器質性睡眠障害
F51.9
非器質性睡眠障害,詳細不明
情緒性睡眠障害 NOS

第6章 神経系の疾患(G00-G99)

挿間性及び発作性障害(G40-G47)
コード コード名
G47
睡眠障害
除外:
・悪夢(F51.5)
・非器質性睡眠障害(F51.-)
・睡眠時驚愕症(F51.4)
・睡眠時遊行症(F51.3)
G47.0 睡眠の導入及び維持の障害[不眠症]
G47.1 過度の傾眠[過眠症]
G47.2 睡眠・覚醒スケジュール障害
G47.3
睡眠時無呼吸
睡眠時無呼吸:
・中枢性
・閉塞性
除外:
・ピクウィック<pickwick>症候群(E66.2)
・新生児睡眠時無呼吸(P28.3)
G47.4 ナルコレプシー及びカタプレキシー
G47.8 その他の睡眠障害
G47.9
睡眠障害,詳細不明
クライネ・レヴィン<Kleine-Levin>症候群

非器質性とは?

脳などの器質的な損傷を伴わない、という意味です。医学でいう器質とは、生体の器官の実質組織(身体の一部や内臓の組織の本質)を指します。器質か非器質か、つまり、身体疾患か精神疾患か、という極論は、睡眠医療の現場では、しばしば求められます。非器質性=心因性、情緒性、などと言い換えても良いでしょう。同じ症状なのに、別々の章にコードが分かれるこの分類法について、日本の専門家の間では、「睡眠・覚醒障害を器質性(神経疾患)と非器質性(精神疾患)に区別する医学的根拠も臨床的妥当性もない」として、かねてより構造的欠陥が指摘されていました。そこで、ICD-11への改訂につながります。

挿間性及び発作性障害とは?

挿間性(episodic)とは、周期的・挿間的に起こる~という意味です。睡眠障害のほか、てんかんや片頭痛なども、同じ神経系疾患のカテゴリに含まれます。

episodicはこれまで挿間性、挿話性、反復発作性、発作性、周期性などと訳されてきた。つまり定訳がない。episodicの語源はギリシア語で「間に入るもの」の意味であり、「時々現れる症状」と解釈される。

新国際頭痛分類(ICHD-2)日本語版 翻訳にあたって

ICD-11(最新版)

ICD-10 から ICD-11 へ移行するにあたって、「第7章 睡眠・覚醒障害」が新設されました。以前は、内科・精神科・神経科など、各分野にまたがって睡眠障害の記述が散見されていましたが、新基準では、過眠症は「睡眠・覚醒障害」という独立した章の中で扱われ、診断名はほぼ睡眠障害国際分類第3版(@@@@ICSD-3)に準拠しています。一般医療の世界においても、睡眠医療の重要性が増してきたことがうかがえます。

ICD-10 ICD-11
第4章 内分泌,栄養及び代謝疾患
E66.2 肥満低換気症候群
第7章 睡眠・覚醒障害
不眠症
過眠症
 7A20 ナルコレプシー等
睡眠関連呼吸障害
 7A40 中枢性睡眠時無呼吸
 7A42.0 肥満低換気症候群等
概日リズム睡眠・覚醒障害
睡眠関連運動障害
 7A80 むずむず脚症候群
 7A83 睡眠関連歯ぎしり等
睡眠時随伴症
 ノンレム睡眠からの覚醒障害
 7B00.1 睡眠時遊行症
 7B00.2 睡眠時驚愕症等
 レム睡眠関連睡眠時随伴症
 7B01.0 レム睡眠行動障害
 7B01.1 反復性弧発性睡眠麻痺 
 7B01.2 悪夢障害等
7B2Y その他の明示された睡眠・覚醒障害
7B2Z 睡眠・覚醒障害,詳細不明
第5章 精神及び行動の障害
F45 身体表現性障害
 歯ぎしり等
F51 非器質性睡眠障害
F51.0 非器質性不眠症
F51.1 非器質性過眠症
F51.2 非器質性睡眠・覚醒スケジュール障害
F51.3 夢遊症
F51.4 夜驚症
F51.5 悪夢
第6章 神経系の疾患
G25.8 その他の異常運動
 むずむず脚症候群
G47 睡眠障害(器質性)
G47.0 不眠症
G47.1 過眠症
G47.2 睡眠・覚醒スケジュール障害
G47.3 睡眠時無呼吸
G47.4 ナルコレプシー
G47.8 その他の睡眠障害
G47.9 睡眠障害,詳細不明
ICD-10 と ICD-11 の比較(睡眠・覚醒障害に関わる項目のみ抜粋)

ICDの歩み

国際疾病分類の改訂には、十年以上の時間をかけて、段階的に、多くの人が関わって開発されます。診断基準や診断分類の改訂には、長い時間がかかります。ある日突然、現在の診断基準が廃止になる、診断分類が変わる、ということは絶対にあり得ません。また、日本国内での適用には、翻訳の問題など、さらに時間がかかります。有識者や専門家が、慎重に協議を重ねて決定していきます。

WHO日本適用期間年間米国運用期間年間
ICD-119001899-190891900-19099
ICD-219091909-1922131910-192010
ICD-319201923-193291921-19298
ICD-419291933-1945121930-19388
ICD-519381946-194931939-19489
ICD-619481950-195771949-19578
ICD-719551958-196791958-19679
ICD-819651968-1978101968-197810
ICD-919751979-1994101979-199819
ICD-1019901995-2005271999-現在

18

(2003)20032006-20159●ICD-10(初版)
1900年公表→1994年告示→1995年適用
(2013)20132016-現在●ICD-10(2013年版)
2013年公表→2015年告示→2016年適用
ICD-112018
※ICD国内運用検討会議(平成29年9月1日)資料
ICD版分類項目数
(細項目)
国内適応期間
(告示改正)
第1 1900年(明治33年)179(-)明治32-明治41年
第21909年(明治42年)189(-)明治42年-大正11年
第31920年(大正9年)205(-)大正12年-昭和 7年
第41929年(昭和4年)200(-)昭和 8年-昭和20年
第51938年(昭和13年)200(-)昭和21年-昭和24年
第61948年(昭和23年)953(-)昭和25年-昭和32年
第71955年(昭和30年)953(-)昭和33年-昭和42年
第81965年(昭和40年)1,040(3,489)昭和43年-昭和53年
第91975年(昭和50年)1,179(7,130)昭和54年-平成 6年
第101990年(平成元年)2,036(14,195)平成 7年-平成17年
2003年(平成17年)2,045(14,258)平成18年-平成27年
2013年(平成25年)2,053(14,609)平成28年-
第112018年(平成30年)

第7章 睡眠・覚醒障害

待望の国際疾病分類最新版「第7章 睡眠・覚醒障害」については、説明項目が長くなりますので、別ページにて内容をご紹介します。

参考文献

精神神経学雑誌 124: 192-197, 2022