はじめに

過眠症にはいくつかの種類がありますが、これらの疾患に対する現在の治療法は非常によく似通っています。また、現在の研究では、これらの疾患の間にも大きな重複がある可能性が示唆されているため、一緒に対策し、研究していくことが重要です。

※「address + 病気」で、疾患に対策する、解決に向けて取り組む、の意味。

過眠症財団. "関連する睡眠障害(過眠症)について". 過眠症財団. 2022年2月28日. https://www.hypersomniafoundation.org/related-disorders/, .

過眠症患者会は、患者・家族・医療従事者の立場を越えて、過眠症について知りたい・啓発したい方ならどなたでも活動に参加できる、広く開かれた会となっています。

過眠症のように、患者数が少ない病気は、団体の体裁を維持していくのが困難です(これは過眠症に限らず、多くの希少疾患の患者会にとって共通の課題です)。ナルコレプシー、特発性過眠症、クライネ・レビン症候群、睡眠不足症候群、他さまざまな過眠症状に悩む近縁疾患の人々が手を取り合い、過眠症という一つの「難病」として、協力し合う姿勢が大切だと当会は考えています。

同じ診断名でも、人によって症状が違ったり、重症度が違ったりします。でも、過眠症状で困っていることがある点は皆同じです。同じ過眠症患者同士、お互いの症状や事情の違いをよく知って尊重し合い、思いやり合うことができたら素敵ですね。

過眠症の症状(共通)

日中の眠気

日中の眠気は、日中の主要覚醒時間帯中に目を覚まし注意を保つことができなくなり、結果として、耐えがたい睡眠欲求のある時間が生じたり、思わずうとうとしたり眠り込んでしまうことと定義されています。

睡眠発作

  • 眠気の強さは人それぞれで、座っていて能動的な関与がほとんど必要とされない、退屈で単調な状況で生じやすい傾向があります。
  • 眠り込む前に眠気が強まることに気づく患者もあれば、ほとんどあるいは全く眠気の前駆症状なしに眠り込む患者もいます。
  • 過眠症患者は、眠気に起因する自動車事故を起こすことがあります。

過眠症の種類

さまざまな眠気の特徴

特発性過眠症毎日の総睡眠時間が大幅に増加しますが、その睡眠には真の回復感を伴いません。
ナルコレプシー短時間の昼寝で眠気を一時的に緩和できますが、まもなく再出現する、あるいはいったんやめた日中の昼寝が再開するという形で、眠気が現れる場合があります。
幼児夜間睡眠が非常に長くなる、あるいはいったん卒業した日中のお昼寝習慣が再開するという形で、眠気が現れる場合があります。
小児逆説的に不注意や情緒不安定、異常に活発な行動を呈したり、学業成績が低下したりする場合もあります。

hypersomniaハイパーソムニアhypersomnolenceハイパーソムノレンスの違い

用語訳語使い分け
hypersomnia
ハイパーソムニア
過眠症特発性過眠症など、個別の睡眠障害に言及する際に用いられる。
hypersomnolence
ハイパーソムノレンス
過眠症状日中の過度の眠気を記述するのに用いられる。

過眠症の検査

日中の眠気の強さは、

主観的な問診エプワース眠気尺度ESS)などの重症度指標

客観的な検査…反復睡眠潜時検査(MSLT

を用いて定量化できます。これらの尺度は、必ずしも常に相関するわけではなく、適切な臨床的判断のもとに使用しなければなりません。臨床場面に適用する際には、睡眠不足と概日リズムの影響を受けやすい、夜通し起きて日中に眠る生活習慣の人々において、MSLTに診断検査の妥当性は確認されていません。また、MSLTが午前8時から午後18時の時間帯外に行なわれる場合、睡眠潜時の正常と異常の範囲は確立されていません。6歳未満の小児に対しては、基準値は得られていません。

反復睡眠潜時検査(MSLT)

反復睡眠潜時検査(MSLT…静かな状況で眠り込む生理的傾向を測定します。中枢性過眠症群を診断することが目的の場合には、米国睡眠医学会(AASM)の実践指針に定められた標準的な手順に従って、MSLTを行うべきです。具体的にはMSLT前の1週間、特に前夜は、患者にできるだけ多く眠るよう促すべきです。睡眠・覚醒相後退障害(DSWPD)の患者では、起床時刻と引き続くMSLT開始時刻を遅らせることが適切な場合もあります。十分な睡眠がとれていることを、MSLT前の1〜2週間の睡眠日誌によって確認すること、そして可能な限りアクチグラフ検査によっても確認することが強く推奨されます。MSLTの平均睡眠潜時は連続変数と考えるべきで、一般に5分未満であることが過度な眠気の指標と考えられ、10分を超えると正常な覚醒水準を示すと考えられます。ここでは、MSLT平均睡眠潜時が8分未満であることを、診断目的での過度な眠気の定義とします。ナルコレプシー患者の約90%は平均睡眠潜時がこの値未満であり、これがナルコレプシーの診断には最良のカットオフ値であることが示されています。MSLT中に複数の睡眠開始時レム睡眠期(入眠時レム睡眠期、SOREMP)を認めることは、平均睡眠潜時が8分以下であることよりもナルコレプシーに特異的な所見です。ただし、SOREMPは睡眠不足症候群や概日リズム障害(DSWPDや交代勤務障害を含む)、睡眠関連呼吸障害(SRBD)、時には健常者にもみられる場合があります。患者の病歴と日中の眠気の訴えに照らして、MSLTの結果を慎重に解釈すべきです。

覚醒維持検査(MWT)

覚醒維持検査(MWT…日中暗くした静かな環境で覚醒状態を維持する能力を測定するもので、通常は治療への反応性を評価するために実施されます。診断目的で用いるべきではありません。

24時間連続睡眠記録、あるいは少なくとも1週間のアクチグラフ記録は、特発性過眠症患者の診断に有用な場合があります。中枢性過眠症群と診断されるすべての患者において、物質や治療薬の使用だけでなく、その他の睡眠障害、身体疾患、精神疾患の合併について再検討がなされるべきです。

過眠症の分類

過眠症の診断分類には、さまざまな種類があり、それぞれの基準によってカテゴリ分けが異なります。また、同じ診断分類でも、最新の研究を反映して、版は常に改訂が重ねられています。現在、臨床の現場では、睡眠障害国際分類(ICSD)が世界標準となっていますが、行政や医療など正式な手続き上は、国際疾病分類(ICD)に従います。どれが正しい、間違っている、と議論するようなものではありません。診断分類によっては、「ナルコレプシー」と「過眠症」を別の疾患と定義する場合もあります。

ICDDSMICSD
最新版ICD-10DSM-5ICSD-3
最新版
発行年
2022年
※日本ではICD-10(2013年版)に準拠
2013年2013年
作成機関WHO
世界保健機関
APA
米国精神医学会
AASM
米国睡眠医学会
対象疾病全般精神障害睡眠障害
目的医学的・行政的に使用医学的に使用医学的に使用

さまざまな診断分類を加味して、ざっくりカテゴリ分けすると、過眠症は以下のような位置づけになると思います。

睡眠障害
┣━不眠症
┣━過眠症
┃┣━ナルコレプシー
┃┃┣━ナルコレプシータイプ1
┃┃┗━ナルコレプシータイプ2
┃┣━特発性過眠症
┃┣━クライネ・レビン症候群(反復性過眠症)
┃┣━睡眠不足症候群
┃┣━器質性過眠症(身体疾患による過眠症)
┃┣━非器質性過眠症(精神疾患に関連する過眠症)
┃┗━ロングスリーパー
┗━その他の睡眠障害

過眠症の診断

過眠は、日常生活でも誰でも経験する症状ですが、仕事や学業の継続困難など、社会生活に支障をきたすような場合には、病的であると考えられます。

過眠症セルフチェック

日中の過度の眠気
日中の過度の眠気がありますか?

※これは、医療従事者が問診によって鑑別診断を行うための診断フローチャートをやさしい表現に直したものです。自己診断の参考にしていただいても構いませんが、質問内容としては不十分であることをご理解ください。例えば、「十分な睡眠時間をとっていますか?」という質問に対して、睡眠不足であるにもかかわらず、現在の睡眠時間が十分であると誤認している患者は、「はい」と答えます。「周期的に症状がおこりますか?」などの質問も、「周期」の定義が不明確です。これらはあくまで、患者の自己申告に依らず、医師が問診で確認すべき項目のチェックリストであり、基準が曖昧な点については、診察の過程で掘り下げて確認してください。

出典

  • 日本睡眠学会診断分類委員会.睡眠障害国際分類.第3版,株式会社ライフ・サイエンス,2010年07月,296
  • 日本睡眠学会診断分類委員会.睡眠障害国際分類.第2版,医学書院,2018年07月11日,