
発達障害当事者の多くは、睡眠のトラブルを抱えています。特性による感覚過敏・身体症状だけでなく、 日常の緊張・ストレスが強いことが背景にあります。
寝具がチクチク痛くて眠れない、かすかな音やにおいが気になって眠れない、といった特有の身体感覚を訴える方もいます。
感覚が過敏な方は、触り心地の良い寝具を使用する、気になる音やにおいを取り除いておく等、睡眠環境を快適に整えることが大切です。
①最低限の日光を浴びること、②適度な運動、③規則正しい食事、④睡眠環境整備の四つが、睡眠問題の基本対策です。
睡眠全体
睡眠不足に陥りやすい
- 作業がなかなか終わらず寝る時間がなくなる(48.7%)
- 「やらなきゃいけない」と思うと睡眠不足になる(44.2%)
- 思うように一日が過ごせないストレスで不眠になる(32.0%)
- 毎日睡眠不足が続いてとてもまいっている(31.5%)
- 普段と環境が変わると眠れない(30.5%)
睡眠リズムが乱れやすい
- たびたび昼夜逆転する(46.7%)
- 睡眠時間が不規則で頻繁にずれる(38.6%)
- 睡眠パターンがかなり人と違う(25.4%)
- 寝る時間帯が変わると体調を崩す(23.9%)
- 睡眠サイクルが狂うと(寝る時間帯がずれると)発熱する(9.1%)
その他の睡眠全体の悩み
- 他の人よりもかなり長い睡眠時間が必要(35.5%)
- 体質的に睡眠障害に陥りやすく生活リズムが乱れやすい(21.3%)
- 夜怖い夢をみるため眠るのがとても怖い(19.3%)
- 睡眠薬が効くときと効かないときがある(17.3%)
- 寝つきの悪さ・寝起きの悪さが年齢によって大きく変わる(16.8%)
睡眠障害を改善する工夫
- 一日中時間を気にせず好きなだけ眠るとリフレッシュできる(34.5%)
- 起きる時間と寝る時間を決めて生活すると調子が良い(34.0%)
- 眠れるかどうかはさておき就寝時間は定めておく(%)
- 「眠る,起きる』に関しては無理をしない(32.0%)
- 寝ない時期が続いても叱らないでそっと見守って欲しい(25.9%)
ほか、睡眠薬を服用する、薬の力を借りて睡眠周期を修正する、夜の就寝時間と日中の睡眠時間を外出することなどをきっかけに切り替えると調子が良い、など
入眠時
眠れない
- いつもずいぶん遅くまで眠くならない(42.1%)
- 入眠までにとても時間がかかる(40.6%)
- スマホ・PC・TVの画面の光の刺激に興奮して眠れなくなる(38.6%)
- とても疲れているのに、夜になると気分がざわざわして落ち着けない(28.9%)
- 過去の嫌な思い出がフラッシュバックして眠れない(28.4%)
寝る前に、光の刺激や考え事で興奮してしまい、なかなか寝付けない→昼間の眠気と居眠りにつながる
その他の入眠時の悩み
- 夜遅い時間を自分の楽しみにあててしま い、遅くまで起きて本を読んだり、TVを見たり、ネットサーフィンしたりしてしまう(50.8%)
- 何かに集中していると寝ることさえ忘れてしまう(44.2%)
- 楽しいことがあると、寝なければならないと頭でわかっていても、なかなか寝る気になれない(44.2%)
- 「今やってしまいたい」という思いを諦めて眠ることがとても難しい(38.6%)
- 一日の中で一番くつろげるのは夜遅い時間なので遅くまで起きてしまう(38.1%)
やりたいことに過集中するあまり、夜更かししてしまう→昼間の眠気と居眠りにつながる
寝つきを良くする工夫
- 外出した日はよく眠れる(39.1%)
- 次の日の準備をしてから眠るととても落ち着いて眠れる(33.5%)
- 無理のない時間にベッドに入る( 29.4%)
- 外の空気を吸って運動するとよく眠れる(25.4%)
- 外に出る時間を増やしたら眠れるようになった(22.8%)
ほか、消灯時間の1〜2時間前には活発な活動はしない、寝室をチェックして気になる音やにおいは取り除いておく、寝る前にいつもの手順で儀式を行うと落ち着いて眠れる、寝る前にバニラミルク(バニラの香りをつけた甘い乳飲料)を飲むとよく眠れる、寝袋で寝るととても落ち着く、など
睡眠中
中途覚醒しやすい
- 夜中に何度も目が覚める(33.5%)
- 他の人の寝息、身動きする気配、いびきなどが非常に気になってゆっ くり眠ることができない(20.3%)
- ちょっと寝ただけで目がさめてしまう(15.2%)
- 一度目を覚ますと朝までまったく寝られない(14.2%)
- 泣きながら目を覚ますことがある(13.2%)
その他の睡眠中の悩み
- フラッシュバックで悪夢をみることがある(18.8%)
- 寝ていると耳が折れていたり、腕を下敷きにしたり、体によだれや歯型がついていたりする(16.2%)
- 眠っている間にベッドから落ちてしまうことがある(15.2%)
- 寝ている間に大きな寝言をいう(13.7%)
- 鼻詰まりからくるひどいイビキがあり、十分に眠れない(12.2%)
起床時
起床が遅い
- よく二度寝してしまう(65.0%)
- 早起きがとても苦手(54.3%)
- いったん眠ったらなかなか起きられない(28.4%)
- 朝「起きなくちゃ」と焦るほど起きられなくなる(25.4%)
- 寝起きが悪く、いつも遅刻してしまう(24.4%)
その他の起床時の悩み
- 朝起きてから起動するまでにとても時間がかかる(44.7%)
- 起きたときも疲れはとれず、体はとてもしんどいと感じる(39.1%)
- ストレスがひどい時は朝の目覚めがとても悪い(28.4%)
- 朝、疲れていてとても起きられない(27.9%)
- 起きた時、ほとんど眠れていない感じがする(22.3%)
朝起きられる方法
- 朝はなんとしても決まった時間に起きる(23.9%)
- 朝コーヒーを飲むとエンジンがかかる(22.8%)
- 目覚まし時計はベッドから出ないと止められない位置に置く(14.2%)
- 楽しみな活動を朝の予定に組み込む(13.7%)
日中
強い眠気
- 日中でもひたすら眠りたいと思う時がよくある(36.0%)
- 熟睡できなかった日は、日中頭がボーッとして、うまく集中できない(33.5%)
- よく眠れていないので昼間はいつも怠く、すぐに昼寝をしたくなる(31.0%)
- 昼間でも一度に何時間も眠りこんでしまうことがある(30.5%)
- 寝ても寝た気がせず、一日眠気に襲われ、実際に眠ったり、意識が飛んだりして、すごくしんどい(27.4%)
その他の日中の悩み
- 睡眠不足の時には特に体調が悪い(41.1%)
- 睡眠不足のときは考えられないような失敗もしてしまう(23.9%)
- 睡眠不足だと体調がとても悪くなり、うつや不安を感じる(19.8%)
- 睡眠不足の時は感覚過敏も身体の動きの不器用さも増加する(17.3%)
- 眠りの質が低下している時は日中めまいがする(16.8%)
- 寝不足の時は、日中高揚しているけど怒りっぽい感じがする(16.8%)
日中の眠気を抑える対策
- 昼寝をすると午後も能率よく仕事ができる(29.9%)
- 昼休みに10〜15分、目を閉じて昼寝をすると午後からの仕事の能率が違う(21.8%)
ほか、日中眠くなったら立つようにしている、など
参考文献
- 東京学芸大学紀要. 総合教育科学系, 68(2): 43-79 発達障害者の睡眠困難と支援に関する研究 : 発達障害の当事者調査から 柴田,真緒; 髙橋,智