眠くて困っている学生さんのためのHINT

学生が授業中に居眠りをしてしまうのには、さまざまな理由があります。

宿題が終わらない、塾や習い事がある、部活がハードすぎる、通学時間が長い、友だち関係のトラブルやストレス、学業生活とバイトの両立で忙しい、家庭環境によるやむを得ない事情、睡眠習慣が不規則、夜遅くまで遊んでいる、などです。

しかし、日中の過度の眠気は、うつ病や薬の副作用、過眠症などの睡眠障害のほか、なんらかの深刻な病気が隠れているケースもあるため、注意が必要です。

眠そうな生徒を助けるにはどうしたらいいでしょうか?

過眠症や、その他の睡眠障害の可能性があるかどうか、四つのヒント「HINT」をチェックしてみてください。

四つのHINT(ヒント)

HYPERSOMNOLENCE(長時間睡眠や日中の過度の眠気などの過眠症状)

充分な(あるいは長時間の)睡眠をとっているにもかかわらず、 一日中過度の眠気に襲われるのが特発性過眠症の特徴です。24時間のうち9~10時間以上は眠る人というが多いです。

INERTIA(睡眠慣性:寝起きの悪さ)

特発性過眠症患者の多くは、起きようとしてから覚醒まで何時間もかかるなど(睡眠慣性)、眠りが非常に深い場合があります。寝床から出るためには、何度もアラームをかけたりする必要があります。目覚めたとしても、認知能力が極端に低下し、寝起きの記憶がないこともあります。

NAPS(仮眠が有効かどうか)

特発性過眠症患者の多くは、昼寝をしてもリフレッシュできません(ナルコレプシーの人とは対照的です)。

TIMELINE(症状が3か月以上続いている)

疲労感や眠気のほか、どのような症状であれ、気になる症状が3か月以上続く場合は、専門医の診察を受けたほうがよいでしょう。

あるケーススタディ…親の視点から

親御さん

大学生の娘がいます。

ある日、家族そろって外出して食事をしようとしたところ、また娘はいつものようにソファやベッドで寝ていて「行方不明」になっていました。
娘は13歳のときに極度の睡眠不足に陥り、10代の頃に何度も小児科医の診察を受けていたのですが…納得のいく答えは出ませんでした。睡眠障害については言及されませんでした。今回、私は娘に大学の保健管理センターで診てもらうように言いました。
その保健医の先生は娘の話をよく聞き、こう言ってくれました。

お医者さん

「あなたは過眠です。睡眠時間が長すぎるし、長期間にわたってこの症状が続いているし、既往症もなく、他の理由では説明がつきません。」

親御さん

そして、地元の病院で睡眠検査を受けることになりました。
夜間の睡眠検査と昼間のMSLT(睡眠潜時反復検査)の結果、特発性過眠症と診断されました。正しい診断を得るまでに7年近くかかりました。後から知ったのですが、診断に何年もかかるのは珍しいことではないようです。娘は地元の睡眠外来に通院することになりました。
ナルコレプシーなど睡眠障害の治療に使われる薬の適応外処方を受けることで、娘はフルタイムで働き、安全に車を運転し、充実した社会生活を送ることができるようになりました。
私は、診断を受けるまで、娘が眠いのは自分のせいだと考えていたことに気づいてあげられませんでした。娘はこう話してくれました。

娘さん

「他の人も私と同じように眠いのを我慢しているのが普通だから、居眠りしてしまうのは私の気持ちの問題だと思ってた」

親御さん

他の親御さんへのアドバイスです。もしお子さんが睡眠に問題を抱えているのであれば、待っていてはいけません。医師の診察を受けてください。そして、正しい診断を受けるまで諦めず動いてください。

※娘さんのプライバシー保護のため、実名は伏せています。

参考文献

Sleepy Students? Use HF’s “HINT” Test!

よくある質問

ただの寝不足だ、ただの寝すぎだなどと言って、親が病院へ連れて行ってくれません。

寝すぎに「ただの」はありません。寝すぎは病気のサインです。

睡眠障害国際分類には、睡眠障害の過眠症のジャンルに、睡眠不足症候群や長時間睡眠者(ロングスリーパー)が定義されています。

「寝すぎ=睡眠時間が長い」という意味かもしれませんが、標準より寝すぎているからと言って、必要な睡眠時間を減らすことはできません。また、なんらかの隠れた病気が原因で「寝すぎ」になっているのかもしれません。

子どもを病院に連れて行かない行為は「医療ネグレクト」にあたります。ネグレクトとは、育児放棄、育児怠慢ともいわれる児童虐待です。

また、眠いと訴えても真剣に取り合ってもらえなかった、という傷つき体験は心理的虐待にもつながります。

児童福祉法には「すべて国民は、児童が心身ともに健やかに生まれ、且つ、育成されるよう努めなければならない」「すべて児童は、ひとしくその生活を保障され、愛護されなければならない」とあります。

保護者の方は、どうか「ただの」睡眠障害と却下せず、子どもの訴えに耳を傾けてください。

親御さんが受診に消極的な時は、学校の先生など、周りの大人に相談しましょう。

著者

藤 崎 友
藤 崎 友
過度の眠気による不登校・定時制高校を経て、慶應義塾大学卒業後、IT企業入社。Webサイト制作・プログラミング歴10年。集客マーケティングに特化した広報デザイン、Webデザイン、ロゴデザイン技術習得。他、英検準一級の語学力と睡眠健康指導士の知識を活かし、睡眠情報の翻訳等を手掛ける。

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