自立支援医療(精神通院医療)について

ナルコレプシーや特発性過眠症は、精神疾患ではないので、
自立支援医療(精神通院医療)の対象ではありません。
ただし、精神障害に関連して生じた過眠症(非器質性過眠症)は、
自立支援医療(精神通院医療)の対象になります。

自立支援医療制度を知っていますか?自立支援医療制度とは、簡単に言うと、3割負担の医療費が1割に軽減される制度です。対象は、①精神通院医療、②更生医療、③育成医療、の三つです。

  1. 精神通院医療:精神疾患を有する者で、通院による精神医療を継続的に要する者
  2. 更生医療:身体障害者手帳の交付を受けた者で、その障害を除去・軽減する手術等の治療により確実に効果が期待できる者(18歳以上)
  3. 育成医療:身体に障害を有する児童で、その障害を除去・軽減する手術等の治療により確実に効果が期待できる者(18歳未満)

ナルコレプシーや過眠症は、①精神通院医療に該当しないのでしょうか?健康福祉局の方に聞いてみました。

過眠症患者会

ナルコレプシーは自立支援医療(精神通院医療)の対象になりますか?

健康福祉局

いいえ、ナルコレプシーは自立支援医療(精神通院医療)の対象ではありません。

過眠症患者会

どうして、ナルコレプシーは自立支援医療(精神通院医療)の対象外なのですか?

健康福祉局

ナルコレプシーは精神疾患ではないからです。
自立支援医療(精神通院医療)の対象となる疾患は、診断書に記載のICDコードがF(精神障害)およびG40(てんかん)のみです。

ICD(国際疾病分類)とは、WHOが作成した「疾病、傷害及び死因の統計分類」です。現在、日本で使用している分類は、ICD-10(2013年版)に準拠しています。

ICDはアルファベットと数字を用いたコードで表され、Fは精神障害(精神及び行動の障害)、Gは神経障害(神経系の疾患)を表しています。

ICD-10を確認したところ、Gコード(神経疾患)の章に、過眠症の分類を見つけることができました。

  • 【G】神経系の疾患
    • 挿間性及び発作性障害(G40-G47)
    • G47:睡眠障害
    • G47.1:過度の傾眠[過眠症]
    • G47.4:ナルコレプシー及びカタプレキシー

でも、あれ?ちょっと待って、Fコード(精神障害)の章にも、過眠症の分類を見つけました!非器質性とは一体どういう意味でしょうか?

  • 【F】精神及び行動の障害
    • 生理的障害及び身体的要因に関連した行動症候群(F50-F59)
    • F51:非器質性睡眠障害
    • F51.1:非器質性過眠症

非器質性とは?

感染や炎症、あるいは血管障害、変性疾患、などで細胞、あるいは組織が破壊、あるいは変化を受ける結果、症状として現れる疾患を器質的疾患と呼びます。多くの身体疾患はこれに属します。

逆に、非器質性とは、「脳の器質的損傷を伴わない」という意味です。

器質性=身体性(機能性)、非器質性=精神性(心因性)、と言い換えてください。

なるほど、うつ病や双極性障害など、精神障害に伴う睡眠障害を、非器質性睡眠障害と呼び、分類はFコード(精神障害)になるんですね。ん?ということは…

過眠症患者会

ICD-10において睡眠障害は、器質性・非器質性に分けてコードされています。非器質性睡眠障害(F51)は、自立支援医療(精神通院医療)の対象になりますか?

健康福祉局

はい、ICDコードがF(精神障害)なので、自立支援医療(精神通院医療)の対象となります。

やったー!聞いてみるものですね♪

しかし、どうして同じ病名が、別々の章に分かれて載っているのでしょうか?ICD-10の概要について知りたい方は、こちらのページをお読みください。

自立支援医療(精神通院医療)について知りたい方は、このまま読み進めてください。

目次

自立支援医療(精神通院医療)について

自立支援医療(精神通院医療)とは?

精神障害で通院している人の医療費負担を軽減する制度です!

自立支援医療精神通院医療)とは、通院による精神医療を続ける必要がある方の通院医療費の自己負担を軽減するための公費負担医療制度です。

対象となる疾患は?

精神障害+てんかんが対象です!ナルコレプシーや過眠症は対象外です。

精神障害(てんかんを含みます)により、通院による治療を続ける必要がある程度の状態の方が対象となります。

  • 統合失調症
  • うつ病、躁うつ病などの気分障害
  • 薬物などの精神作用物質による急性中毒又はその依存症
  • PTSDなどのストレス関連障害や、パニック障害などの不安障害
  • 知的障害、心理的発達の障害
  • アルツハイマー病型認知症、血管性認知症
  • てんかん

など

医療費の軽減が受けられる医療の範囲を教えてください。

その名の通り、通院が対象です!入院は対象外です。

精神障害や、当該精神障害に起因して生じた病態に対して、精神通院医療を担当する医師による病院又は診療所に入院しないで行われる医療(外来、外来での投薬、デイ・ケア、訪問看護等が含まれます)が対象となります。

当該精神障害に起因して生じた病態とは、精神障害の治療に関連して生じた病態や精神障害の症状である躁状態、抑うつ状態、幻覚妄想、情動障害、行動障害、残遺状態等によって生じた病態のことです。)

※次のような医療は対象外となります。

  • 入院医療の費用
  • 公的医療保険が対象とならない治療、投薬などの費用(例:病院や診療所以外でのカウンセリング)
  • 精神障害と関係のない疾患の医療費

医療費の自己負担はいくらになりますか?

3割負担が1割になります!

一般の方であれば公的医療保険で3割の医療費を負担しているところが1割に軽減されます。

(例:ひと月の医療費が7,000円、医療保険による自己負担が2,100円の場合、本制度により、自己負担を700円に軽減します。)

また、この1割の負担が過大なものとならないよう、更に1か月当たりの負担には世帯※1の所得に応じて上限を設けています。

(※1)ここでいう「世帯」とは、通院される方と同じ健康保険などの公的医療保険に加入する方を同一の「世帯」として捉えています。

さらに、統合失調症などで、医療費が高額な治療を長期間にわたり続けなければならない方(本制度では「重度かつ継続※2」と呼んでいます)で、市町村民税課税世帯の方は、通常とは別に負担上限月額が定められ、負担が軽減されています。

(※2)「重度かつ継続」の対象者。次のいずれかに該当する方です。

  1. 医療保険の「多数回該当」の方(直近の12か月間に、国民健康保険などの公的医療保険の「高額療養費」の支給を3回以上受けた方)
    • 1~5の精神疾患の方(カッコ内はICD-10(疾病及び関連保健問題の国際統計分類)による分類)
    • ①症状性を含む器質性精神障害(F0)(例)高次脳機能障害、認知症など
    • ② 精神作用物質使用による精神及び行動の障害(F1)(例)アルコール依存症、薬物依存症など
    • ③統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害(F2)
    • ④気分障害(F3)(例)うつ病、躁うつ病など
    • ⑤てんかん(G40)
  2. 3年以上精神医療を経験している医師から、情動及び行動の障害又は不安及び不穏状態を示すことから入院によらない計画的かつ集中的な精神医療(状態の維持、悪化予防のための医療を含む)が続けて必要であると判断された方

これらを図にすると、以下のとおりです。

自立支援医療費を受給するための手続きを教えてください。

申請に必要な書類を提出しましょう!

申請はお住まいの市町村の担当窓口で行ってください。(市町村によって、担当する課の名称は異なりますが障害福祉課、保健福祉課が担当する場合が多いようです。)

申請が認められると、「自立支援医療受給者証」が交付されます

申請に必要な書類を教えてください。

申請に必要なものは概ね以下の通りですが、自治体により異なる場合がありますので、詳しくは市町村の担当課や、お住まいの地域にある精神保健福祉センターにお問い合わせください。

  1. 申請書自立支援医療支給認定申請書)@市町村等(医療機関で入手できる場合もあります)
  2. 医師の診断書@医療機関(様式は市町村等にもあります。)
    • 通院している精神科の病院・診療所で記入してもらいます。
    • 「重度かつ継続」に該当する場合は、様式が異なることもあります。
    • 精神障害者保健福祉手帳と同時に申請する場合や、前年の申請で診断書を提出した場合など、診断書が省略できる場合もあります。市町村・精神保健福祉センター等にご確認ください。
  3. 同じ医療保険世帯の方の所得の状況等が確認できる資料
    • 市町村民税課税世帯の場合…市町村民(住民)税の課税状況が確認できる資料(課税証明書)
    • 市町村民税非課税世帯の場合…市町村民(住民)非課税証明書、ご本人(18歳未満の場合は保護者)の収入が確認できる書類(障害年金などの振込通知書の写しなど)
    • 生活保護世帯の場合…生活保護受給証明書
  4. 健康保険証(写しなど)…世帯全員の名前が記載されている被保険者証・被扶養者証・組合員証など医療保険の加入関係を示すもの。
  5. マイナンバーの確認書類…個人番号、身元確認ができる書類(個人番号カードなど)
  6. その他
    • 自治体によって必要書類が異なることがあるので、市町村の担当課や精神保健福祉センターにお問い合わせください。

(※3)本制度による医療費助成を受けられるのは「指定自立支援医療機関」での医療に限られています(診断書を記載できるのも同様です)。今通院している病院や診療所が指定自立支援医療機関となっているか、ご確認をお願いします。

(※4)申請する市町村で必要なデータを把握できる場合は、窓口で同意書を提出するなどにより、必要書類の一部の提出が省略できる場合もあります(課税証明書、非課税証明書など)。

自立支援医療を受けるときには、何が必要ですか?

受給者証と自己負担上限額管理票を提示してください!

自立支援医療を受ける時には、その都度、交付された「受給者証自立支援医療受給者証)」と、自己負担上限額管理票を医療機関に提示してください。

受給者証に有効期間はありますか?

受給者証は毎年更新が必要です!2回に1回は診断書を省略できます。

受給者証の有効期間は1年以内です。有効期間終了後も引き続き自立支援医療を受ける場合は、更新が必要になります。更新の申請は、おおむね有効期間終了3ヶ月前から受付が始まります。病態や治療方針に変更がなければ、2回に1回は医師の診断書の省略ができますので、詳しくは申請した市町村にお問い合わせください。

自立支援医療(精神通院医療)で医療を受けられる医療機関や薬局は決まっていますか?

自立支援医療精神通院医療)が利用できるのは、指定自立支援医療機関に限られます!

本制度による医療費の軽減が受けられるのは、各都道府県又は指定都市が指定した「指定自立支援医療機関」(病院・診療所、薬局、訪問看護ステーション)で、受給者証に記載されたものに限られています。

現在通院している医療機関や、通院を希望する医療機関等が指定されているかどうかは、医療機関におたずねいただくか、精神保健福祉センター、都道府県、指定都市等の担当課にお問い合わせください。

引用文献

精神疾患で通院による精神医療を続ける必要がある病状の方に、通院のための医療費の自己負担を軽減する制度があります[PDF形式:306KB]

心身の反応(機能性身体症状)について

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