かつては眠れる森の美女症候群と呼ばれていた希少疾患です。
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クライネ・レビン症候群は、百万人に1~2人の希少疾患で、ほとんど情報がありません。このコンテンツは、朝井香子先生の著書「クライネ・レビン症候群の教科書」を元にしています。

同義語

  • 眠り姫症候群
  • 眠れる森の美女症候群
  • 眠りの森の美女症候群
  • クライネ・レビン症候群
  • クライン・レヴィン症候群
  • 反復性過眠症(はんぷくせいかみんしょう)
  • 周期性傾眠症(しゅうきせいけいみんしょう)

※英語表記はKleine-Levin Syndromeですが、日本語表記では、ハイフンと長音記号が紛らわしいため、代わりに「・(中点)」または「=(ダブルハイフン)」を区切り記号として用いる場合があります。表記は統一されていません。

診断基準

過度の眠気と睡眠持続時間を伴う病相期を少なくとも2回反復し、それぞれの病相期は2日から5週間持続しますか?

クライネ・レビン症候群の概要

  • 1925年にクライネは(Kleine)によって最初に報告され、1936年にレビン(Levin)によって詳しく説明され、1942年にクリチリーとホフマン(Critchley and Hoffman)によって定義づけられ、クライネ・レビン症候群と名づけられました。
  • 稀な疾患で、有病率は100万人に1~2人とされ(0.0001%)、世界で600例ほどしか報告されていません。
  • 80%以上が10代に発症し、男女比は2:1です。成人や幼児も罹患する場合があります。
  • 病相期の中央値は10日間で病相間欠期の中央値は3か月。
  • 症状の持続期間は中央値14年。

クライネ・レビン症候群の症状

病相期の期間は7日間から14日間、つまり1週間から2週間が一番多く、42日間(6週間)以上49日間(7週間)以下という人も報告されています。
中には77日間(11週間)以上84日間(12週間)以下とほぼ3か月間も病相期が続いた記録もあります。逆に言うと、3か月以上も病相期が続く場合は他の疾患を疑った方がいいかもしれません。寝たきりになる病気はたくさんあり、特に生命に関わる病気の場合には緊急に処置が望まれる場合もあります。クライネ・レビン症候群だと思っていたら他の病気だったという報告もありますので、この辺りは気を付けて頂きたいところです。

病相間欠期の期間ですが、3か月以下が一番多く、次に3か月から6か月、6か月から9カ月となっており、1年半の間に集中しています。クライネレビン症候群の症状としては病相期を1年半の間に1度以上繰り返すこととしています。

症状:再発性過眠
症状:病相期に少なくとも一つの症状を伴う

クライネ・レビン症候群の治療法

効果的な治療法はありません。

  • 病相期の症状が深刻でない場合は、積極的治療を控えることが推奨されます。親の病気の理解を促進し、患者を支えることが望まれます。
  • 学校、仕事は症状が治まるまで調整(休む)必要があります。(安全で快適な環境で、患者が親御さんなどの監督下で自宅で休むことが推奨される)
  • 患者が一人で歩き回ったり、車を運転することは控えるべきです。
  • うつ状態や、不安の症状は注意深くモニターし、対症療法を行うべきです。
  • また過眠の対症療法として“起きる”薬は有益である可能性があります。
  • 病相間欠期には睡眠覚醒時間をきっちり管理し、アルコール摂取を控えたり、風邪などを引かないように気を付けます。
治療
過眠期を予防する確立した手段はありません。規則正しい生活を送り、睡眠不足、飲酒を避けてください。「炭酸リチウム」が予防に有効との報告がありますが、全例に効果があるわけではありません。加齢に伴い、次第に過眠期の生じる頻度が減少することが一般的ですが症例数が少なく情報がありません。対症療法としての薬物療法は存在しますが、効き目には個人差があります。

​参考文献

  • 朝井香子. クライネ・レビン症候群の教科書 東京図書出版 2021年
  • Mitchell G Miglis and Christian Guilleminault. Kleine-Levin syndrome: a review;Nat Sci Sleep. 2014; 6: 19–26. 
  • Arnulf I, Zeitzer JM, File J, Farber N, Mignot E. Kleine-Levin syndrome: a systematic review of 186 cases in the literature. Brain. 2005;128:2763–2776.
  • 米国睡眠医学会. "クライネ・レビン症候群(Kleine-Levin Syndrome)". 睡眠障害国際分類. 日本睡眠学会診断分類委員会. 第3版, 東京, ライフ・サイエンス, 2018, p.116-118.
  • 内山真. "クライネ・レビン症候群(反復性過眠症)". 睡眠障害の対応と治療ガイドライン. 睡眠障害の診断・治療ガイドライン研究会. 第3版, 東京, じほう, 2019, p.200.