過眠症と自立支援医療制度
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自立支援医療制度とは?
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自立支援医療制度とは、心身の障害を除去・軽減するための医療について、医療費の自己負担額を軽減する公費負担医療制度のことです。
端的に「医療費が1割負担になる制度」と理解している方が多いと思います。
自立支援医療制度の種類には、①精神通院医療、②更生医療、③育成医療、の3つがあります。
種類 | 対象者 |
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精神通院医療 | 精神保健福祉法第5条に規定する統合失調症などの精神疾患を有する者で、通院による精神医療を継続的に要する者 |
更生医療 | 身体障害者福祉法に基づき身体障害者手帳の交付を受けた者で、その障害を除去・軽減する手術等の治療により確実に効果が期待できる者(18歳以上) |
育成医療 | 身体に障害を有する児童で、その障害を除去・軽減する手術等の治療により確実に効果が期待できる者(18歳未満) |
過眠症は、①精神通院医療には該当しないのでしょうか?
行政の健康福祉局に聞いてみました!

ナルコレプシーが、自立支援医療の対象疾患かどうか教えてください。

ナルコレプシーは、自立支援医療の対象外です。

なぜ、ナルコレプシーは自立支援医療の対象外なのでしょうか?

日本では現在、国際疾病分類(ICD-10)に基づいた診断分類を採用しています。自立支援医療(精神通院医療)の対象となるのは、F00~99にコードされている疾患およびG40のてんかんです。ナルコレプシーは、F(精神障害)ではなくG(神経疾患)に分類されているため、自立支援医療の対象になりません。

国際疾病分類(ICD-10)における分類では、過眠症は、F51(非器質性)と、G47(器質性)に分かれてコーディングされています。
たとえば、同じ過眠症状でも、G47と診断された方は自立支援医療の対象外となり、F51と診断された方は、自立支援医療の対象になるということでしょうか?

はい、その通りです。精神障害に関連して発症した過眠症である、と診断されれば、自立支援医療の対象です。

ナルコレプシーの確定診断を受けてしまうと、自立支援医療の対象外になってしまうわけですね。

はい、そうなります。

わかりやすく回答してくださり、ありがとうございました。
自立支援医療(精神通院医療)は、精神障害の方を対象とした制度であり、ナルコレプシーは精神障害ではなく神経疾患にあたるため、対象外となっている、という説明でした。
しかし、同じ神経疾患であるてんかんは、例外的に、精神通院医療の対象となっています。これは、患者団体の発言力の差かもしれません。
ナルコレプシーについては、てんかんと同じ慢性発作性疾患でもあるため、自立支援法(通院費公費負担制度)を適用すべきであると、ナルコレプシーの患者会が10年以上前から要請していますが、実現していません。
また、国際疾病分類(ICD)は定期的に改訂されています。最新版では、睡眠・覚醒障害は、新しい章として独立することが決まっており、精神疾患のFコードに戻ることはありません。
睡眠・覚醒障害が、身体でも精神でもない、一つのヘルスケア・カテゴリとして認知されることで、医療費や生活に関する公的援助の見直しにつながることを期待します。
なお、この記事では、不公平だ、間違っている、という現行制度の批判は行いません。過眠症患者にとって、利用できる・できない制度を知り、仕組みを理解することが目的です。過眠症患者会では、常に中庸な情報発信を心がけています。
自立支援医療制度
対象となる方
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過眠症患者は、自立支援医療制度を利用することができますか?
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できる場合と、できない場合があります。ご自身の診断をご確認ください。
ナルコレプシー、特発性過眠症、クライネ・レビン症候群など、器質性の過眠症として確定診断を受けている患者は、同制度の対象外です。
しかし、精神疾患に関連する過眠症(F51.1:非器質性過眠症)と診断された患者については、同制度を利用することができます。
また、器質性過眠症と診断を受けている方でも、他に精神疾患をお持ちの場合や、身体障害者手帳をお持ちの場合など、その疾患の治療に関して、同制度の適応が可能です。
ご自身の診断名がわからない場合は、主治医にご確認ください。
医療費の軽減が受けられる医療の範囲
精神障害や、当該精神障害に起因して生じた病態に対して、精神通院医療を担当する医師による病院又は診療所に入院しないで行われる医療(外来、外来での投薬、デイ・ケア、訪問看護等が含まれます)が対象となります。
(当該精神障害に起因して生じた病態とは、精神障害の治療に関連して生じた病態や精神障害の症状である躁状態、抑うつ状態、幻覚妄想、情動障害、行動障害、残遺状態等によって生じた病態のことです。)
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過眠症の検査入院費用が安くなりますか?
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いいえ。
「精神【通院】医療」なので、入院医療の費用は、自立支援医療の対象外です。
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モディオダール代が安くなりますか?
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条件により、適応できる場合があります。
モディオダールの適応症として確定診断を受けている方で、別の持病についても自立支援医療制度をご利用の方は、モディオダールの費用について、申請が通る可能性があるので、ご自身の要件をご確認ください。
自立支援医療費を受給するための手続き
- 申請書に記入する
- 申請書(自立支援医療支給認定申請書)は、行政のの担当窓口等で入手できます。
- 医師に診断書を書いてもらう
- 通院している精神科の病院・診療所で記入してもらいます。
※「重度かつ継続」に該当する場合は、様式が異なることもあります。
※精神障害者保健福祉手帳と同時に申請する場合や、前年の申請で診断書を提出した場合など、診断書が省略できる場合もあります。
- 所得の証明書類を揃える
- 同じ医療保険世帯の方の所得の状況等が確認できる資料が必要です。
・住民税課税世帯の場合…課税証明書
・住民税非課税世帯の場合…非課税証明書
・生活保護世帯の場合…生活保護受給証明書
※自治体によっては省略できます。
- 申請する
- 健康保険証やマイナンバーの確認書類など、必要な書類が揃ったら、お住まいの地域の担当窓口で申請を行ってください。
- 自立支援医療受給者証の交付
- 申請が認められると、「自立支援医療受給者証」が交付されます。
※申請に必要な書類は、自治体によって異なることがあるので、行政の担当課や精神保健福祉センターにお問い合わせください。
受給者証の有効期間
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受給者証に有効期間はありますか?
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はい。受給者証の有効期間は1年以内です。
有効期間終了後も引き続き自立支援医療を受ける場合は、更新が必要になります。
更新の申請は、おおむね有効期間終了3ヶ月前から受付が始まります。
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毎年、更新のたびに医師の診断書が必要になりますか?
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いいえ。病態や治療方針に変更がなければ、2回に1回は医師の診断書の省略ができるので、詳しくは申請した市町村にお問い合わせください。
自立支援医療を受けられる医療機関や薬局について
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どの医療機関や薬局でも医療費の軽減が受けられるのですか?
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いいえ。自立支援医療制度による医療費の軽減が受けられるのは、各都道府県又は指定都市が指定した「指定自立支援医療機関」(病院・診療所、薬局、訪問看護ステーション)で、受給者証に記載されたものに限られています。
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自分の通院先が、自立支援医療機関に指定されているかどうかわかりません。
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現在通院している医療機関や、通院を希望する医療機関等が指定されているかどうかは、医療機関におたずねいただくか、精神保健福祉センター、都道府県、指定都市等の担当課にお問い合わせください。
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