令和4年度診療報酬改定について

令和4年4月1日、リフィル処方箋制度が始まったことをご存じですか?

また、令和4年度診療報酬改定に伴い、薬価基準が改定されています。併せてご確認ください。

リフィル処方箋

リフィル処方箋とは?

リフィル処方箋とは、症状が安定している患者について、医師の処方により、医師及び薬剤師の適切な連携の下、一定期間内に処方箋を反復利用できる仕組みのことです。

リフィルとは?

リフィル(refill)とは、英語で、詰め替え・補充や、(飲食物の)おかわり、という意味の言葉です。皆さんも、ドラッグストアで日用品を買い物する時など、本体よりお得な詰め替え用(リフィル)を購入する場合がありますね。

リフィル処方箋の問題

  • 病院にとっては、収益が減ると同時に、診察を経ずに長期処方を行うことでリスクは増します。実際にリフィル処方箋が普及するかどうかは不明です。
  • 患者自身が処方箋を保管する必要があります。処方箋を紛失した場合、再発行(受診)が必要です。物の管理が苦手な特性をもつ方には、厳しいかもしれません。

リフィル処方箋の仕組み

  1. 保険医療機関の保険医がリフィルによる処方が可能と判断した場合には、処方箋の「リフィル可」欄にレ点を記入する。
  2. リフィル処方箋の総使用回数の上限は3回までとする。また、1回当たり投薬期間及び総投薬期間については、医師が、患者の病状等を踏まえ、個別に医学的に適切と判断した期間とする。
  3. 保険医療機関及び保険医療養担当規則において、投薬量に限度が定められている医薬品及び湿布薬については、リフィル処方箋による投薬を行うことはできない。
  4. リフィル処方箋による1回目の調剤を行うことが可能な期間については、通常の処方箋の場合と同様とする。2回目以降の調剤については、原則として、前回の調剤日を起点とし、当該調剤に係る投薬期間を経過する日を次回調剤予定日とし、その前後7日以内とする。
  5. 保険薬局は、1回目又は2回目(3回可の場合)に調剤を行った場合、リフィル処方箋に調剤日及び次回調剤予定日を記載するとともに、調剤を実施した保険薬局の名称及び保険薬剤師の氏名を余白又は裏面に記載の上、当該リフィル処方箋の写しを保管すること。また、当該リフィル処方箋の総使用回数の調剤が終わった場合、調剤済処方箋として保管すること。
  6. 保険薬局の保険薬剤師は、リフィル処方箋により調剤するに当たって、患者の服薬状況等の確認を行い、リフィル処方箋により調剤することが不適切と判断した場合には、調剤を行わず、受診勧奨を行うとともに、処方医に速やかに情報提供を行うこと。また、リフィル処方箋により調剤した場合は、調剤した内容、患者の服薬状況等について必要に応じ処方医へ情報提供を行うこと。
  7. 保険薬局の保険薬剤師は、リフィル処方箋の交付を受けた患者に対して、継続的な薬学的管理指導のため、同一の保険薬局で調剤を受けるべきである旨を説明すること。
  8. 保険薬局の保険薬剤師は、患者の次回の調剤を受ける予定を確認すること。予定される時期に患者が来局しない場合は、電話等により調剤の状況を確認すること。患者が他の保険薬局において調剤を受けることを申し出ている場合は、当該他の保険薬局に調剤の状況とともに必要な情報をあらかじめ提供すること。

補足

リフィル処方箋の有効期限(調剤可能期間)について、わかりにくいので図解します。

4/1にお薬30日分の処方箋を発行し、すべて期限ギリギリに調剤した場合の例

文言の解釈や、日数計算が間違っていたらご指摘ください。この単純計算だと、お薬を切らしてしまっている期間を含むことになりますが、実際の服薬においては、休薬日等もあると思います。また、実際の調剤日を起点として計算される次回の調剤可能期間については、約2週間と猶予が長いため、いつ調剤するかによって、受診スケジュールは1か月近く誤差が出ます。リフィル処方箋を活用することによって、処方箋目的の通院負担が約1/3に抑えられる可能性がある、ということだけ、おわかりただければ十分です。

海外におけるリフィル制度との比較

日本
名称 リフィル処方箋
導入時期 2022年~
対象患者 医師の処方により、薬剤師による服薬管理の下、一定期間内に処方箋の反復利用が可能である患者
有効期限 1回目:通常の処方箋の場合と同様(発行日を入れて4日間)
2回目以降:原則として、前回の調剤日を起点とし、当該調剤に係る投薬期間を経過する日を次回調剤予定日とし、その前後7日以内
※リフィル処方箋の総使用回数の上限3回までの範囲内で、1回当たりの投薬期間及び総投薬期間については、医師の判断により異なる。
規制 保険医療機関及び保険医療養担当規則において、投薬量に限度が定められている医薬品及び湿布薬については、リフィル処方箋による投薬を行うことはできない。→リタリン・モディダール・ベタナミンなど、一般的な過眠症治療薬は、30日までという処方制限があるため、リフィル処方の対象外
運用 ※「リフィル処方箋の仕組み」参照
アメリカ
名称 リフィル調剤
※州により異なる
導入時期 1951年~
対象患者 規制なし
有効期限 規制区分ごとに異なるが、最長6ヶ月まで
※カリフォルニア州の場合、法的制限なし。ただし、一般に最大2年を超えるリフィル調剤は行われない
規制 一部禁止薬剤あり→過眠症の場合は?<追記>
運用 ・患者は薬局にリフィル調剤を依頼。調剤後は、薬局で処方箋を保管。
・リフィル調剤時には、薬局で保管している処方箋情報を基に行う。
・異なる薬局でリフィル調剤可能。(薬局間で処方箋の移動を行う)
イギリス
名称 リピータブル処方箋
導入時期 2002年~
対象患者 特に制約はないが、以下の患者が主な対象
・治療内容が安定
・長期的な治療が必要
・複数疾患で治療中(高血圧、糖尿病、喘息など)
・季節的な症状に対して自己管理可能
有効期限 リフィル処方箋は、雛形となる親処方箋と発行番号が打たれた子処方箋がセット。投薬期間の規定はないが、2015年11月現在は以下のとおり運用。
・親処方箋の有効期限:半年~1年
・子処方箋による投薬:概ね1ヶ月
規制 一部禁止薬剤あり→過眠症の場合は?<追記>
運用 ・親処方箋は医師のサイン・有効期限・期限後の診察日の記入が必要
・子処方箋は保険請求の際に薬局が用いるもので、薬を受け取った際に患者がサインする
・薬剤師は処方変更の必要がないか確認した上でリピート調剤を実施
フランス
名称 リフィル処方箋
導入時期 2004年~
対象患者 ・慢性疾患の患者
・経口避妊薬(ピル)を服用する患者
有効期限 ・処方箋は6ヶ月の期間を限度(処方箋の有効期間1年)
・薬局での調剤は3ヶ月が限度
規制 一部禁止薬剤あり→過眠症の場合は?<追記>
運用 ・慢性疾患の患者が処方箋を紛失した場合、手元の古い処方せんを薬局に持参し、治療薬を証明することも可能
・慢性治療(避妊薬、心血管疾患、ホルモン治療及び糖尿病薬)におけるリフィル処方箋の期限が過ぎた場合は、継続服用が必要な患者に対して、薬剤師が追加で薬剤を出すことが可能。
オーストラリア
名称 リピート調剤
導入時期 1960年~
対象患者 症状が安定している慢性疾患患者
有効期限 6ヶ月又は12ヶ月(区分により異なる)
規制 一部禁止薬剤あり→過眠症の場合は?<追記>
運用 ・リピート調剤時には、毎回、最終調剤日と残りのリフィル回数を記載
ドイツ
リフィル制度なし
所感
アメリカやオーストラリアなど、一部の国では、古くは戦後からリフィル処方の仕組みがあったが、諸外国への普及は近年。過眠症は基本的に慢性疾患であり、薬の継続処方のためだけに、30日ごとに通院しなければならない現状を負担に感じている患者は多い。リフィル処方が叶えばありがたいが、過眠症の治療薬は、処方日数に制限のある向精神薬である、という懸念点をクリアする必要があり、病院・患者・薬局が連携した適正な調剤管理の仕組みが望まれる。

分割調剤との違い

分割調剤とは?

分割調剤とは、①薬剤の長期保存が困難な場合、②後発医薬品を初めて使用する場合、③医師による指示がある場合などに行われる、最大3回に分けて調剤を行う方法です。

薬価基準改定の概要

区分成分名規格品名メーカー名改定前
薬価
改定後
薬価
備考
内用薬エルゴタミン酒石酸塩・無水カフェイン配合剤1錠クリアミン配合錠S0.5日医工6.8
内用薬エルゴタミン酒石酸塩・無水カフェイン配合剤1錠クリアミン配合錠A1.0日医工10.6
内用薬シメトリド・無水カフェイン1gキョーリンAP2配合顆粒杏林製薬11
内用薬メチルフェニデート塩酸塩10mg1錠リタリン錠10mgノバルティスファーマ7.5
内用薬メチルフェニデート塩酸塩18mg1錠コンサータ錠18mgヤンセンファーマ344.1先発品
内用薬メチルフェニデート塩酸塩27mg1錠コンサータ錠27mgヤンセンファーマ381.2先発品
内用薬メチルフェニデート塩酸塩36mg1錠コンサータ錠36mgヤンセンファーマ410.1先発品
内用薬ペモリン10mg1錠ベタナミン錠10mg三和化学研究所9.1後発品
内用薬ペモリン25mg1錠ベタナミン錠25mg三和化学研究所19.8後発品
内用薬ペモリン50mg1錠ベタナミン錠50mg三和化学研究所41.1後発品
内用薬モダフィニル100mg1錠モディオダール錠100mgアルフレッサファーマ407.8344.1先発品
薬価収載15年超
内用薬安息香酸ナトリウムカフェイン1g(局)安息香酸ナトリウムカフェイン7.3
内用薬安息香酸ナトリウムカフェイン1g(局)安息香酸ナトリウムカフェイン原末「マルイシ」丸石製薬8.6
内用薬カフェイン水和物1g(局)カフェイン水和物7.5
内用薬カフェイン水和物1g(局)カフェイン水和物原末「マルイシ」丸石製薬9.7
内用薬カフェイン水和物1g(局)カフェイン水和物「ファイザー」原末マイランEPD9.7R5.3.31まで
内用薬カフェイン水和物1g(局)カフェイン水和物「VTRS」原末マイランEPD9.7R4.4.20収載
内用薬無水カフェイン1g(局)無水カフェイン9.7
注射薬安息香酸ナトリウムカフェイン10%1mL1管安息香酸Naカフェイン注100mg「フソー」扶桑薬品工業64後発品
注射薬安息香酸ナトリウムカフェイン20%1mL1管安息香酸Naカフェイン注200mg「フソー」扶桑薬品工業64後発品
注射薬無水カフェイン60mg3mL1瓶レスピア静注・経口液60mgノーベルファーマ825先発品

参考資料

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