ナルコレプシー

Narcolepsy(347)

ICSD-1出版当時(1994年)の情報です。

1.同義語とキーワード

眠気過剰、異常レム睡眠、情動脱力発作、睡眠麻痺(金縛り)、入眠時幻覚、夜間睡眠分断、HLA-DR2またはDw2陽性所見、遺伝的要因

2.基本的特徴

ナルコレプシーの原因は不明です。過度の眠気が特徴であり、典型的には情動脱力発作およびその他のレム睡眠現象、例えば睡眠麻痺や入眠時幻覚などを伴います。

【日中の過度の眠気】ナルコレプシーの過度の眠気の特徴は短時間持続する(通常1時間以内)居眠りの反復です。ナルコレプシー患者は典型的に10-20分眠り、さっぱりと目覚めますが、また2-3時間たつと再び眠気を催すというパターンを繰り返します。眠ってしまうのは通常、普通でも疲労しやすい場面、たとえば乗り物に乗っているとき、単調な会議で発言する必要のないとき、観劇、音楽会、映画、退屈な講義を聴いているときなどです。患者は、もし努力と注意集中により起きていようと頑張れば、しばしばこの眠気を我慢することができます。しかし実際問題として、毎日繰り返す眠気と戦うことは不可能です。

【睡眠発作】普通なら眠ってしまうことなど考えられない状況、たとえば試験中、商談中、食事中、歩行中、運転中、自分から会話している最中などに、突然かつ耐えられない睡眠発作が起こることがあります。通常、睡眠発作は日常的にみられる眠気を背景として起こります。

【情動脱力発作】情動脱力発作が既往症にあることはナルコレプシーの独特で特徴的な徴候です。その特徴は強い情動により誘発される両側性の筋緊張の突然の喪失です。意識は清明に保たれ、記憶の障害はなく、呼吸も異常がありません。情動脱力発作の持続は通常短く、2-3秒から数分くらいで、速やかかつ完全に回復します。筋緊張の喪失の強さはさまざまで、筋肉に力の入らない感じ程度の軽いものから、頭が垂れ下がる、顔が垂れる、顎が落ちる、言葉がもごもごする、膝がガクンとなる、さらには完全な姿勢筋の脱力状態のため床に転がってしまうなどまであります。軽い場合には他の人にはわからないぐらいのこともあります。情動脱力発作は、通常喜びもしくは興奮するような要素をもった感情、たとえば大笑い、大喜び、得意、怒り、驚きなど、によって誘発されることが常です。情動脱力発作の起こる部位は、体の一部分であったり、全身の骨格筋であったりします。腰、下肢、または上肢、頚(けい)、口、または眼瞼が部分的に侵されることがあります。呼吸筋と眼筋は侵されません。時には強い感情による情動脱力発作が次々と情動脱力発作を誘発し、「情動脱力発作重積状態」と呼ばれることがあります。重責状態は長く続くことがあり、稀ではありますが1時間にも及ぶことがあります。時には情動脱力発作にすぐ続いて睡眠が起こることがあります。プロトリプチンやイミプラミンなどの三環系抗うつ剤投与は情動脱力発作を常に改善します。

情動脱力発作の頻度は個人差が大きく、年にあるかないかというほど稀な患者から、一日に数えきれないほど頻発する患者まであります。年月が経つうちに患者は情動脱力発作が起こるような状況を避けることを学び、情動脱力発作の頻度を減らすことができるようになることがあります。

3.随伴特徴

4.経過

5.素因

6.有病率

7.発症年齢

8.性比

9.家族的発現様式

10.病理

11.合併症

12.睡眠ポリグラフ所見

13.他の臨床検査所見

14.鑑別診断

15.診断基準

16.最小限基準

17.重症度基準

18.持続基準

19.文献

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